プロローグ ~ 魅惑の公開処刑 ~
打ち鳴らされるドラムに合わせ、暗闇を無数のライトが走る。
次第に強く、高まるビートとともに乱れ舞う光線は、やがて1点に集まり……
舞台の上、豪華な椅子に脚を組んで座る、私を浮かび上がらせた。
ぴったりと身を包む黒ボンテージ。
黒の網タイツとガーターベルト、煽情的な赤いヒール。
手に持った鞭を音高く打ち鳴らし、私は艶然と微笑む。
「いらっしゃい、罵ってあげるわ!」
――― 拝啓、お姉様。
シヅルは、今日も頑張っています。 ―――
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「……あら、昔の私みたい」
舞台の上の 『女王』 を眺め、静那はクスリ、と笑みを漏らした。
高級SMクラブ 『辛子浣腸』 のオーナーがプロデュースする、観客参加型SMショー 『公開処刑』 初演。
もと 『辛子浣腸』 のナンバーワン女王様であったよしみで招待され、夫の昭野と共に舞台を観にきたのだ。
「静那様の方が、凄い女王様でした……!」
足台となっている昭野の、恍惚とした声に応じて、静那は踏みつける踵に、更に力を込める。
「ううっ……」
「もういちど?」
「あっ……静那様以上の、女王様はいらっしゃいません……!」
「あら。私の可愛い後輩をコケにするの? さ い て い ね ?」
「ひっ…… 申し訳ありません……!」
昭野の声が、苦痛と期待の両方の色を帯び…… 静那は唇を艶然と微笑ませた。
「後でたっぷり、お仕置きしてあげるわ! それから明日のお弁当も……!」
「ありがとうございますぅぅぅ!」
感激に身を震わせる、昭野である。……きっと、明日の弁当は、ハバネロ唐辛子で赤く染まっていることだろう……。
「楽しみにしていらっしゃい!」
ふふっ、と小さく笑って昭野の背にぐっと体重をかけ、静那は舞台の上で鞭をふるう後輩を、優しく見守るのだった。
制作:秋の桜子さま
(Picrewの「ぼくの女王様」でつくったよ! https://picrew.me/share?cd=KXkjeiOcoO #Picrew #ぼくの女王様)
5/20 誤字訂正しました!報告下さった方、ありがとうございます!