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少女と試練とステートラン  作者: マグローK
1/6

封印そして開放のとき

「私は人を傷つけた」

 そんな自責の念を心の中へと浮かび上がらせるのはナホミがつけているブレスレットが原因だ。

 ナホミはそれを自分の意志でつけたものの、過去の苦い記憶を思い出させるがためにとうとう好きにはなれなかった。

 ナホミは天才魔法使いだ。

 だが、天才魔法使いであるがゆえに幼少期の力のコントロールは大きな課題だった。

 力の大きさに身体が見合っていなかったのだ。

 ついに力は暴発し一人の少年を傷つけてしまった。

 幸いに少年は致命傷には至らなかったものの幼いナホミの心には大きな傷を残す結果となった。

 ナホミはその日から自分の力の大きさを自覚し自分の意志によるコントロールの甘さを心へと刻みつけるためにブレスレットをはめ続けているのだ。大人と認められるまで自分を戒めるために。

 ブレスレットには、幾万もの減魔の文字列が刻まれ身につけるものの力をその年齢に見合ったものへと制限する。

 使用に伴う副作用などはないが力あふれるナホミにとって大きな物足りなさが募っていた。

 しかし、そんなフラストレーションに負けることなく今日まで生きてこられたのは一概に戒めが効いていたということだろう。

 そして、明日ナホミは17歳となる。

 ナホミの暮らす村では17歳になる日に試練を行うことが通例となっている。そう大人になるための試練だ。

 17歳、それはナホミが力の制限を開放する初日でもある。

 魔力の開放という重大な出来事に不安と期待を抱きつつも冷静であるためにナホミは過去を振り返った。


「えい、やっ」

 事件が起きたのはナホミがまだ5歳のときだ。

 いつものように火を出し水を出ししているところへ。

「こんにちは」

 挨拶したのは幼馴染のユージィだった。

「こんにちは」

「今日もいい調子だね」

「うん!」

 ナホミは会うたびそうして褒めてくれるユージィのことが好きだった。

「今日はね。ご本に載ってた魔法の練習をしようと思うの」

「いいじゃん!」

 ナホミの気持ちは強く、それが過ちを犯させた。

「えいっ」

「うわぁ」

 最初のうちはまだ良かった。

 規模もそれほどではなく子供でも頑張ればできないことはないレベルだったからだ。

 しかし、

「これ、大丈夫?」

「へーきへーき」

 いいところを見せようとしたナホミは止めておくべきところを見誤った。

 普段ならば危険を少しでも察知したならば中断していたものを好きな人の近くだったがために冷静さを欠いてしまっていたのだ。

「ねぇ! まずいよ」

「だい、じょうぶ、だって」

「ナホミ! 辛そうだよ!」

「へーき、へーき」

 その言葉を最後にナホミの視界は真っ白になった。

 魔法が暴発してしまったのだ。

 使っていた魔法は空気中の物質すべてを一転に圧縮させるもの。

 大人でも完成形に至るまでは最低でも3年の集中的修行が必要になるその魔法をただ本を見ただけで完成させようとしたことが失敗の原因だった。

 不幸にもその魔法は暴発時にも強い威力を発揮し、周囲の物質を一度まとめ上げたあとで爆発する。

 そんなことを知らないユージィは直感的に危険を察知しナホミを安全圏まで突き飛ばし自分を犠牲にしたのだ。

 ナホミはユージィのおかげで無傷で済んだものの、ユージィには大人たちがどれだけ尽力しても治らない傷を与えてしまった。

「ユージィ? 大丈夫?」

「ヘヘッ! へーきへーき」

 ユージィはいつナホミが来ても、そうして笑いかけてくれたのだ。

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