第10章 6話
「はぁああああ!!」
ついに!!
剣がヘレクロウスの鎧の隙間を突いた!
「ぐっ・・・!!」
決まった!!
「やるなぁ・・・。これならクロウも倒せそうだな・・・」
え・・・?
なんで・・・?
ヘレクロウスがクロウを呼び捨てに?
四天王じゃないの?
クロウの部下なら・・・。
様付けしてるはずなのに・・・。
「あー、まいった。我が身を犠牲にして確かめて正解って所だがな」
へ・・・?
どういう事?
「実はな・・・。俺はあんまり奴の事を好きじゃなかったんだ」
えぇ!?
「だがな・・・。俺も奴の魔力に縛られてしまった。この妖魔界が好きだったんだがなぁ・・・」
この人・・・。
これまでの敵とは違う・・・。
「だから、この妖魔界を救う奴と戦って・・・それで消えるなら本望よ」
ヘレクロウス・・・。
「だから・・・。少々姑息な手を使わせてもらった。けどな・・・奴はもっと卑怯だぜ?気をつけな・・・」
まさか・・・。
クロウの魔力にやられながらも、ここまで自我を持ってるとは・・・。
ううん。
たぶん、最初は本当にやられていたんだと思う。
だけど・・・この妖魔界を思う心が正気に戻したんだと思う。
そしてその罪滅ぼしに・・・私と戦う事を決めた。
あえて卑怯な手段を使いながらも。
「頑張れよ」
そう言い残すと・・・。
ヘレクロウスは消えてしまった。
「・・・何だったんですか?あれは・・・?」
呆然と見守っているフェア。
「あいつ・・・。私に許してもらいたかったのね・・・。この妖魔界を混乱させた事を」
あっさり引いた所を見ると・・・。
クロウの完全な手下って訳でも無かった。
ここにもまた、悲劇に巻き込まれた人がいた。
と・・・とにかく。
これで・・・いよいよ巨人の目に行ける訳ね。