第1章 6話
ふぅ・・・。
「あの・・・ありがとうございます」
妖精さんがお礼を言ってくる。
「ううん。いいのよ。何か気づいたら声出しちゃったようなもんだから」
嘘は言ってない。
何せ後悔しちゃったぐらいだし。
でも・・・それでも見捨てるぐらいなら勇気を振り絞った方がいい。
「あの・・・私、佐藤葉子って言うの。あなたは?」
「ヨーコですか?えっと・・・私はフェアリーとしか」
フェアリーって・・・確か妖精って意味だったわよね。
どういう事なのかしら。
「あんまり・・・そういう風に名前を呼び合うってのが無いから」
へぇ・・・。
個別の名前が無いのかしら。
それにしても・・・。
この妖精を見ると、ここが私のいる世界とは違うってハッキリ分かる。
あの化け物もそうだけど。
絶対あんなの見た事ない。
「あっ、そうだ!聞きたいんだけど、ドルイドのオババって何処にいるの?」
この子を助ける為に走り回ってしまって、現在位置が分からなくなってしまっていた。
「え?あのオババに用ですか?」
「ええ。ちょっとね」
ある意味とても重要な事だし。
「それなら、私が案内します。助けて貰ったお礼に」
「いいの?ありがとう」
ふふ。
なんか妙な展開になって来ちゃったわね。
・・・あれ?
そういえば・・・。
今頃気になったけど。
何で私ここにいる人達の言葉が分かるのかしら?
あのルドルフって奴は完全に人間と同じ姿していたから気にならなかったけど。
彼女はどう見たって人間じゃない。
大きさなんか私の手のひらぐらいの大きさしか無い。
さらに羽で飛んでいる。
幼い頃に聞いたような妖精の姿そのもの。
「そういえば・・・なんであの化け物に追い掛けられていたの?」
ふと思った疑問を言った。
「だって・・・あれゴブリンだもの」
「・・・ゴブリン?」
何それ?
「え?知らないの?」
私は素直に頷く。
「あのね。なんか・・・ルドルフって奴の言葉だと、私は人間界から連れて来られたんだって」
「えぇ!!それじゃあ・・・ルドルフ様のお客様だったんですか!!」
え?えええ???
「こ・・・これは・・・知らぬとはいえ、失礼の数々・・・」
「ちょ・・・ちょっと待ってよ。別にそんなんじゃないから」
というよりも・・・。
あいつってそんなに偉い奴だったんだ・・・。




