第1章 5話
「待ちなさい!」
思わず叫んじゃったけど・・・。
ハッキリ言って叫んでから後悔してしまった。
そりゃあ・・・確かに見過ごす事は出来ないけど。
相手は1匹とはいえ、鋭い爪を武器にしている。
それに対して私はどう?
まったくの素手で何の武器も持ってない。
そりゃあ・・・お姉ちゃんみたいに素手でも戦える人なら話は別でしょうけど・・・。
私は何か武術を習ってる訳でも無い。
何にも無い状態で戦える訳では無い。
どうしよ・・・。
そうだ!
何か・・・武器になりそうな物・・・。
「ギャー!!」
どうやら私に獲物を変えたみたい・・・。
どうしよ・・・。
とりあえず・・・。
逃げるが勝ち!!
逃げる・・・逃げる・・・逃げる!!
後ろを見る・・・。
うっ・・・追い掛けてくる。
しかも・・・どんどんその距離が短くなって来ている。
あっちの方が足が速いんだわ。
このままじゃ追いつかれる!
どうしよう・・・どうしよう・・・。
あっ!
目の前に木が。
あれだわ!!
「えぃ!!」
ジャンプして木の枝に捕まる。
そのまま・・・木の上に登る。
ふぅ・・・。
下を見ると・・・恨めしそうな表情で化け物が見ている。
だけど登ってくる気配は無い。
どうやら木を登る事は出来ないみたいね。
それでも奴はずっと下にいる。
とりあえずの危機は去ったけど・・・。
あいつをどうにかしないと駄目ね。
でもどうしよう・・・。
むざむざ降りても、あの爪の餌食になるのは目に見えている。
何か策を考えないと・・・。
でもここは木の上だし、そんなたいした物は・・・。
ん?
木・・・?
そうだ!!
木の枝を折って・・・。
よし!これで尖った武器が手に入ったわ。
あとは・・・。
・・・残酷だけど・・・やるしか無い!
「たあ!!」
化け物の上に飛び降りる。
もちろん、さっき手に入れた木の枝のとがった方を下に向けて。
このまま・・・降りた時の衝撃で突き刺す!!
・・・瞬間、目を背ける。
だけど・・・化け物は倒れていた。
残酷かもしれないけれど。
こうしなきゃ、私やあの子が殺されていた。




