第12章 4話
冗談じゃない!
いくらなんでも結婚だなんてありえない!!
「何をそんなに嫌がっているんですか?」
「あのねぇ・・・フェア・・・」
どうもこの辺りの感覚はみんなとは違ってるらしい。
すでにこの妖魔界では、祝福ムードで漂っている。
あの発言の日からすでに3日。
これ以上いたら、本当に結婚させられそうだわ。
「ルドルフ!!」
私は王の間に入る。
その大きな椅子に悠然と座っている。
そりゃあ・・・確かに美形であるのは認めるけど・・・。
そういう問題じゃないわよ。
「どうした?」
「前にも言ったと思うけど。私、帰りたいんだけど」
そう。
このまま妖魔界に留まりたく無い理由はもう一つある。
「私は突然ここに来てしまった。家ではお母さんやお姉ちゃんが心配してると思うの。クロウを倒すまでは帰る事は考えて無かったけど・・・こうして平和になったんだから、まずは帰して」
これが本当に私が帰りたい理由。
結婚とかは別に拒否し続けていればいいだけの話だけど。
お母さんやお姉ちゃんに心配をし続けてまで、ここに留まる事は出来ない。
「例え心配していなくても、理由を話して・・・また戻ってくればいいだけの話でしょ?」
正直、私はここを気に入っている。
命がけで冒険をして救った場所というのもあるし。
ここにはフェアやユニコ、ウルちゃんもいる。
そして・・・。
またあそこにも行きたい。
たぶん、あのままにしておいた方がいいと思うけど。
もう安全になったから、何度でも行きたい。
「それがな・・・。そうは簡単にはいかない」
え?
「どういう事?」
「今回おまえを呼んだのは、このアーティファクトを使ってなんだが」
そう言って、小さなベルを取り出す。
「これはこの妖魔界と異世界とを繋ぐアイテムなんだが・・・。残念ながら3回しか使えない」
3回・・・?
「だったらいいじゃない。もう一度戻してまた私を呼べば・・・」
「忘れたのか?これはすでに2度使ってる」
2度・・・?
私の他に誰が・・・。
あっ!
「ロボ!!」
「そうだ。あいつを呼ぶのに、すでに一度使っている」
と・・・いう事は・・・。
私が戻ったが最後・・・もう妖魔界には来れない事になる・・・。
それは・・・困る。
「なんだ。そういう事なら仕方ない。帰るのは諦めるわ」
「やけにあっさりしてるな」
「当たり前じゃない。私だってこの妖魔界が好きなんだもの。妖魔界に戻れないなら帰るのを諦めるわ」
「ヨーコ様!!」
フェアが抱きついて来る。
「そりゃあ、確かにお母さんやお姉ちゃんの事を考えると・・・困る話だけど、大丈夫。分かってくれるわよ」
私はみんなと・・・そしてこの妖魔界を離れたく無いし。
「すまない・・・」
「いいのよ。私はここに来れて良かったと心の底から思ってるんだから」
お母さん・・・お姉ちゃん。
私はもう帰れないけれど。
この妖魔界で元気に楽しく過ごそうと思います。
それは、この妖魔界が好きだから。
そして・・・。
ここに住むみんなが好きだから。
「それなら、すぐにでも結婚の準備を・・・」
「それは嫌ーーーー!!」
今回をもちまして「妖魔界」は最終回となりました。
読んでくださった全ての読者の方々に、感謝をいたします。