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カサブタ

作者: 音澤 煙管




いつの頃からかは、はっきり覚えてはいない。無駄になる事、溜まる一方の処分を無くしたかったのかもしれないし、必要として居ない事にも気が付いて、何年前か新聞購読は断った。


テレビやラジオしか無かった時代に比べて、今の世の中は情報源の選択が自由なのも個人的主観の理由、これも時代の流れなのかと思う‥それを考えても便利な世の中になった。


朝の新聞が届いても、忙しくて読んで居る時間も無いし、会社へ持って行き、途中で読めるような通勤手段でも無いし、会社でのんびりと読む時間など以ての外だ。


必要な生活の為に理不尽で、やりたくもない当たり前の下らない用事を済ませて家に帰って来ても、新聞の事など頭には無いし、10年前に比べて今ではテレビも点けない。

帰宅後は取り敢えずラジオを点けて、矛盾した下らない事で染まった頭をリセットする‥。


テレビを点けない理由として、不透明な下らない事で染まった頭を家に居てまでも下らない事で染まりたくないからだ。

昨今のテレビ番組には言いたい事は山ほどある‥一方的なシステムだから、拒否するのがわかりやすいだろうと自己主張をしているだけだ。


ラジオで、ここ最近で頻繁な災害の速報が流れてくると、尋常ではないと判断した時にだけ年に数回テレビを観る、それだけで充分だろうしそれ以外は無駄で下らない。


お茶の間と呼ばれる時代、家族団欒としてのアイテムも時代の変貌で懐かしく思うのは素直な気持ちだ‥。


時間に余裕があっても、新聞に目を通すのは一面〜三面記事やローカルの事故や犯罪だけ。読む文章も短くて済むし、他には興味も無い、それが数年前までの事だった‥。


週に一度、実母の所へ出向く。

加齢もあり、体力もだいぶ落ちて目も悪く顔を見るついでに実母おススメの土産を貰いに行く‥玄関を開け、居間に入ると無造作に積まれた新聞に目が止まる。


幼い頃の仕返しではないが説教をしたい気持ちを抑え、無駄話ついでに2、3日前の新聞を手に取る。情報は既に頭の中にあるから三面記事は割愛してローカルの事件を読む。

ふーん‥へぇー‥、それで終わり。

産業記事には新製品や新開発、新しめな記事もざっと目を通すがそれも終わる。


今の今までは目を向けなかった小説や本の話題が載っていると興味がある自分に気付く、老眼になっている目を細め眉間にシワをヨセ読み通す‥母の話の続きをしたいのか斜め隣で吠えているのを喧しく思うも活字に集中する。


「あんた‥オヤジに似てきたね?」


その一言で我に還る‥。

これをキッカケに、今は同居していないオヤジとの昔話に花が咲く。

オヤジとは、まともに話さなかったから、

この時に聞かされる事で父親像が出来上がるのもしばしばで、想像の中で回想する。


今のテレビ並みに、下らないと思って居たオヤジ像、言いたい事も山のようにあるオヤジ像‥母親に、幼い頃から悪い事しか聞かされていなかった想像上だけのオヤジ像をこの年齢で聞きながら描き替えられていく。


もう遠い少年期に感じた、オヤジへの気持ちを掻きむしっていた心の傷に、

年相応の今までに出来上がっていた瘡蓋が剥がれていく時でもあった。


良い思い出も、悪い思いも‥

大事な想いは、カサブタの下に何時もある‥

多分、これからも。




おわり





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