3話
仕事に行きたくないと思っていたむつだが、行かないという選択肢はなかったのか、アラームが鳴る前には目を覚ました。化粧をするつもりで、鏡を覗いて見ると瞼はまだ腫れている。1時間やそこらで、腫れが引くとは思っていないむつは、とりあえず隈だけ隠すようにファンデーションを塗った。そして、まだ早いが家を出てよろず屋に向かう事にした。
いつもより早い電車に乗り、早めに事務所に着くとむつは鍵を開けた。引っ越しをして少し遠くなったからか、近頃は颯介か山上の方が早く来ている事が多い。だが、今日は久しぶりの1番乗り。外は風があり寒かったせいか、事務所内が暖かく感じられたが、それもすぐ気のせいに変わった。エアコンの暖房を部屋が暖まるまでは、30度にまで上げてむつは掃除に取り掛かった。
床の埃はモップで取り、机の上を綺麗に吹いた所で、祐斗と颯介がやってきた。
「おはようぉございまぁす」
「おはよう、むっちゃん」
「おはようございます。祐斗は完全に二日酔いですって顔してるわね」
むつはくすくすと笑うと、雑巾を片付けてコーヒーをいれにキッチンに入っていった。朝、来てむつが居た事、いつもと変わりない様子に颯介も祐斗も顔を見合わせると、ほっと息をついた。