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2話
翌朝、物音で目覚めた西原はゆっくりと身体を起こした。ソファーで眠ったから、身体が強張っているかと思ったが意外とそうでもなかった。起き上がってみると、毛布は掛けられているし、ソファーの背もたれも倒してある。いつの間にか、むつがしてくれたのだろう。嫌な思いをさせ、怖がらせた泣かせたというのに、こうまでされると余計に惨めだった。
「…おはよ」
かすれた声が聞こえ、そっちを見るとむつ居た。最近はかけていなかった黒縁の眼鏡をかけている。
「おはよう…昨日は」
「朝ご飯、簡単だけど食べて。外寒いし」
言葉を聞きたくないのか、西原が言いかけたのに対してかぶせるように言いながら、むつはダイニングテーブルにコーヒーを置いた。
寝るのが遅かったはずなのに、西原より先に起き、朝食の用意までされているとなると、断る事は出来ずに、西原は素直にダイニングテーブルについた。




