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2話
西原はタバコに火をつけて、煙を吐き出しながらドアの方を見た。まだむつはドアの前に居るのか、鼻をすする音と圧し殺したような嗚咽が聞こえてきている。
こんなつもりじゃなかったのに、という後悔と冬四郎ならよくて、自分はダメなのかという惨めさ。それと共に、いつまで経ってもむつを泣かせてばかりの自分を情けなく思っていた。考えてみれば、夜景を見に行った時も、みんなの前で話していた時も、今も全部に自分が関わってむつが泣いている。後悔しかなかった。
そんなに残っていないワインをちびちびと呑みながら、西原は落ち着きなくタバコを吸っていた。
明け方も近くなってきた頃、ようやくむつの泣き声も聞こえなくなった。泣き疲れて眠ったのだろう。そうは思ったが、西原は様子を見には行けなかった。もし、物音に気付いて起きたむつがまた泣き出す可能性の方がおおいにあったからだ。
むつが出してくれたあてとワインを飲み干し、西原はそれらを流しに持っていくとソファーに横たわった。