2話
ばくっとクラッカーを口に入れたむつは噛み砕いて、ぐいぐいもワインで流し込んだ。ソファーから下りてクッションに座り直すと、どぼどぼとワインを入れた。
好きなカシューナッツをぼりぼりと噛み、むつはまたワインを呑んだ。
「…大丈夫か?そんなに呑んで」
「この時間だもんね…太るかも」
壁にかけてある時計は、もうすぐ2時を指そうとしている。だが、むつは構う事なく煮物に箸をつけた。
ソファーから下り、ごりごりと蓮根を噛む、むつの隣に座った西原は、むにっとむつの脇腹を掴んだ。
「大丈夫だろ。もうちょい増量した方が、むにゅってして抱き心地良さそうだしな」
「うるさい、うむさい」
仕返しとばかり、むつは西原の腹をまさぐったが、掴むどころかつまめるような肉もなかった。
「まじ?えっ、最低」
西原の手を払い除けたむつ、自分の腹を両手で抱くように隠した。
「動いてるからな」
「やっぱり運動か…」
うぅむと唸ったが、むつはまた蓮根を口に入れた。西原はひじきを食べながら、ビールを飲み干すとワインをグラスに注いだ。
「相変わらず、蓮根好きだな。これ、蓮根ばっかりだし。で、人参は嫌いと…」
「嫌いでも食べてるだけまし」
むつは、そう言ったが小鉢に盛られた煮物の人参を器用に取り分けて西原の皿に移していく。