2話
山上に言われると、むつも強くは反論出来ないのか、素直に頷いた。冬四郎はむつの鞄を持つと、先に店から出ていった。
「気を付けてな」
「うん…あの、今日はお忙しい中、ありがとうございます‼んー…ちょっとスッキリしたし、明日は普通に出社するね」
むつが深々と頭を下げると、颯介と山上は笑みを浮かべた。祐斗はすでに、座敷の隅で眠っている。祐斗の横に座っている西原は気まずいのか、むつの方を見て見ない。むつも西原の方は見ないようにしている。
「改まって言うな、照れるだろ」
「むっちゃん、また明日ね」
「うん。また明日…おやすみ」
ひらひらと手を振って、むつは外で待っている冬四郎の所に向かった。見送りに出た戸井にも、頭を下げて何か話をしている。そして、手を振って帰って行った。
「…いやぁ、びっくりする話でしたよ」
「だろうな。俺も昨日聞いた時はどうしようかと思った。昨日は言い出す前から泣きそうだったからな…何かと思ったら…まぁ重大な事かもしれないけど」
「色々、悩んでたんでしょうね。最近、元気がなかった理由がはっきりして、ちょっと安心しましたけど」
「あとは、むつ次第だな」
山上と颯介は呑み足りないのか、戸井に焼酎のお湯割りを頼んで、ちびちびと呑んでいる。
「…西原、お前が気落ちする事じゃないからな」
「あ、はい…」
西原は、ぼんやりとドアの方を見ていた。