2話
むつは怪我の手当てを山上と戸井にしてもらいながら冬四郎に寄り掛かり、ふぁふぁと欠伸を連発し始めた。朝が早かったうえ単独事故を起こしたり、泣きじゃくったりと忙しく疲れ眠くなったのだろう。
「たまちゃん眠そうだね」
消毒をして傷薬を塗りたくって、ズボンにつかないようにとガーゼで覆ってから、ネットをつけられた足。戸井が丁寧に、まくっていたズボンを下ろした。
「うん、眠ったい…お酒のせいかも」
「手当て終わったし帰る?」
「うん…戸井ちゃん、チェック」
よろよろと立ち上がったむつは、鞄から財布を出して万札を何枚か引き抜いて戸井に渡した。
「おいおい、むつ。お前が出すなよ」
「え、いいの。今日は、あたしが呼び出してるから…まだ呑むならあとは自分たちで」
山上もだが、冬四郎、颯介、西原も慌てて財布を取り出している。だが、むつは頑として譲らない。
「なら、ご馳走になるな」
「うん。そうして」
鞄に財布を突っ込み、コートを着るとむつは、眠そうに目を擦すっている。
「…むつ、送ってやるよ」
むつの返事を待たずに、冬四郎はコートを着ている。 むつが大丈夫だと言っても聞かない。
「1人で帰れるって。まだ皆居るもん、居なよ」
「なら、タクシーつかまえてやるから」
「むつ、もう遅い時間だし。タクシー乗るまでは、みやに居て貰え。酔っぱらいも多いし、絡まれたら大変だからな」