752/753
12話
だが、その時すぱーんっと襖が開いて、むつは跳び跳ねるようにして驚いた。西原もびくっと肩を震わせると、動きを止めた。
「西原さんっ‼お粥出来ましたから…って、あ、あれ…あ、あーっ‼宮前さーんっ‼西原さんがむつさん泣かせてます‼」
お盆に小さな土鍋とお椀を乗せてやってきた祐斗は、むつの目からぽろっと溢れた涙と西原がむつに迫っているのを見て、廊下に向かって大声で叫んだ。
「ちっ、違う!!祐斗君!!違うんだって、これは…その…え、えーっ‼む、むつごめん、ごめんって泣かせるつもりじゃ…ちょ、ごめんな、本当。調子に乗った」
ぽろぽろと涙を溢すむつを見て、西原は調子に乗ってやりすぎたと反省すると共に、ぱたぱたとスリッパの鳴る音が聞こえてくるのに焦った。
「西原さん‼むつさんをかばって大怪我したからって、その弱味に漬け込んで迫ったんでしょ‼さいってーですっ‼信じらんない。男として恥ですよ、恥!!それにまた、むつさん泣かせて、どんだけ泣かせたら気が済むんですか!?」




