751/753
12話
西原はゆっくりと顔をあげると、もう1度むつにキスをした。軽く触れるだけのキス。ただ、唇を重ね合わせるだけなのに心地よく、大事な瞬間のように思えた。
唇が離れると、むつは今にも泣きそうな顔をして身体を震わせていた。西原は罪悪感でいっぱいになっていたが、1度してしまうと、どうにも止められなかった。再びしようと顔を近付けると、むつが息を飲んだ。
「嫌なら、突き飛ばせよ」
「………」
むつは困ったように、うつむいた。悩んでいるのか、むつは西原の浴衣をぎゅっと握っただけだった。
本気で嫌がられてるわけじゃないと思った西原は、やや強引にむつの顔を自分の方に向かせて、唇を重ねようと近付けた。




