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12話
あとほんの数センチの所で、西原は止まると震えているむつの手をそっと握った。少し力を込めると、震えは少し収まり、むつの指から力が抜けた。
いつまでも何もしてこないからか、むつは目を開けて西原を見上げた。潤んでいる瞳と、少し開いている唇から溜め息のような吐息が漏れると西原は引き寄せるようにして唇を重ねた。
あっと驚いたような小さな声は、すぐに消えた。ちゅっと音を立てて、西原は唇を離したが、すぐにまた角度を変えるようにして唇を重ねた。舌先でそろっと唇を撫でると、はぁと漏れる吐息と共にむつの身体が震えた。ほんの少し開いた唇の上下を甘噛みして、西原はそっと離れるとむつの肩に額を乗せた。
「ダメだ…もっとしたくなるだけだった」
西原がごめんと言うと、むつは首を傾げるようにして、西原の頭に頬を寄せた。