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よろず屋 -無い物は-  作者: 幹藤 あさ
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2話

山上がついでくれた日本酒を舐めるように、ゆっくり呑んでいるむつは、ふぅと息をついた。


「…何か今、新鮮」


「新鮮?」


独り言のように、お猪口に入っている酒を見ながらむつが呟くと冬四郎が聞き返した。顔を上げたむつは、こくっと頷いて冬四郎の腕に寄り掛かった。


「うん…でも、少し怖い」


どういう事なのか冬四郎には分からなかったが、むつがそう感じているなら、そうなのだろうとあまり深く聞きはしなかった。今はあまり聞くよりも、むつが言いたい時に言わせてあげた方がいいと思ったのだろう。


「…いにちぃに言わないでね」


「分かってる。相手するの疲れるからだろ?」


「そんなはっきり言わなくても…」


「で、お前怪我とか大丈夫なのか?」


のそっと身体を起こしたむつは、ズボンを膝までまくりあげた。怪我をしたのは外側なのか、冬四郎に見えるように少し膝を内側に向けた。冬四郎は膝に手を当てると、内側も見た。一緒に見ていた山上は、唖然とした様子で口が開いている。


「…確かに擦り傷だけどお前」


「と、戸井さーんっ‼救急箱とかないですか?むつが怪我してます!!」


山上が大きな声で言うと、言い合いをしていた祐斗と西原は、ぴたっと口を閉じた。


「この怪我で、よく正座してられたよな…」


足首のあたりから膝下の外側は、擦り傷が出来ているが、ちょっと転びました程度ではない。かなり出血もあったのだろう。よく見れば、爪先まで真っ赤に染まっているし、内側は内出血で赤黒くなっている。


「お前…この怪我で運転したのか?」


「…うん。痛くて泣きそうだった」


冬四郎は溜め息をついた。戸井がばたばたと消毒液やら絆創膏やらあるものを全部抱えてやってきた。


「他に怪我は?全部見せてみろ」


「…脱がなきゃいけなくなる」


ぺちんっと冬四郎に額を叩かれたむつは、下唇を噛んでそっぽを向いたがもう泣く事はなかった。

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