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12話
西原の優しい言葉に、むつははっとした時には目からぽろっと涙が落ちていた。泣くつもりなんて無かったのに、ぽろぽろと涙が溢れて、止まらなかった。
「また泣く…お前、いつからそんなに泣き虫になったんだ?」
「…分かんな…っ…」
少し呆れたように言い、西原はそっとむつを抱き寄せた。嫌がられるかもと思っていたが、むつは何の抵抗もなく西原の腕にすっぽりと包まれた。ぐずぐずと泣いているむつを見て、西原は人知れず笑みを浮かべた。
「昔より、可愛くなったよな。そうやって、前は泣いたりしなかったし…頼ってもくれなかったし。今でも、強がってるけどな」
「皆が…甘い、から…」
「うん。良い事だな、甘えられる人達が周りに居るって事なんだからな。それだけ、信用してるんだろ?」
「ん…先輩の事もっ…だよ…」
「んー?俺は悲しませてる方が多い気がするからな。はぁ…でも、ダメだよな。泣いてる顔も可愛くって仕方ない。ましてや、今は俺の腕の中に居てくれて…すっげぇ幸せ」




