746/753
12話
「無理しない方がいいよ?」
「うん。でもさ、むつの顔見たい。眼鏡ないから、近くじゃないとちゃんと見えないし」
西原に寄り添うようにして、ぴったりと身体をつけていたむつは、そんな風に言われ、また少し顔を赤くした。
「俺に近寄られるの嫌か?前に、2人きりでは…って言われてるし。嫌なら、はっきり言ってくれよ?もう、泣かせたくないからな」
「…ん、その…何もしないなら」
「その約束は難しい。好きな子に何もしないで居るのって、結構ツラいよ。それがさ、前に付き合ってた子なら尚更…つい」
西原はむつの頬に触れた。
「…こんな風に触りたくなる」
むつがはっと息を飲むのを西原は感じていたが、手を引っ込める事はしなかった。
「むつ、ありがとうな。最期にってわがまま聞いてくれて、それに俺の事をかばってもくれたし」
「でも、結局は先輩がかばってくれたから…だから、こんな怪我させちゃって…」
「そんなのいいんだよ。むつが、無事で居てくれるなら、それでいいんだ」




