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12話
「…最期にって言うから、あたしに出来る事ならって思って…でも、その…嫌とかじゃなかったよ…?」
「本当か?」
こくっとむつが恥ずかしそうに頷くと、西原は腕に力を入れて身体を起こした。だが、思った以上に力が入らなかったのか、がくんっと崩れそうになるとむつは咄嗟に抱き締めるようにして受け止めた。
「っ…悪い」
ふにっとした柔らかい胸に顔を押し付ける状態になり、西原は自分の軽率さを恥ずかしく思った。起き上がって、恥ずかしがってるむつの側に寄りたかっただけなのに、起き上がる事も出来ずに支えて貰っている。
「大丈夫?起きるの?」
「…起きる」
優しいむつの声は少し、かすれていた。むつの手に支えられ、身体を起こした西原はふぅと溜め息をついた。




