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12話
一口吸ってから、冬四郎の唇にタバコを戻してむつは首元に顔を埋めた。冬四郎は当たり前のように腰に手を回して、むつが落ちないようにしている。
「…まぁた、人の前でいちゃいちゃして…俺、仮にも怪我人。それも大怪我ですよ?」
いつの間にか目を開けていた西原が、横向きになり2人を睨むように見ていた。眼鏡がないせいで、視界が悪くどうしても睨むような目になってしまうのだろう。
「何だ、起きてたのか?具合はどうだ?」
「まぁまぁです。寝起きは最悪ですけど。むつ、宮前さんから離れろよ」
西原は自分の枕元をぱしぱしと叩いて、ここに座れと言っている。だが、むつは首を傾げるだけで動こうとはしない。
「キスした仲なのに」
いじけたように西原が言うと、むつは思い出したのか、少しずつ顔を赤くしていった。




