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12話
「分かった…そうする。けど、それを1番言いそうなのは、先輩なんだよね」
はぁと溜め息まじにり言ったむつだったが、少し嬉しそうに笑みを浮かべていた。
「だろうな。でも、西原君はむつの命の恩人ってやつになったからな…」
「そうね。でも、その先輩の命の恩人になったのって、お地蔵様を連れ戻した祐斗なんじゃないかしら…」
「誰も谷代君には、頭が上がらないな」
「しばらくは、ね」
くすくすと笑いながら、むつは冬四郎を見上げていた。冬四郎は袂から出した携帯灰皿に灰を落として、再びタバコをくわえた。むつは腰を上げて、冬四郎の膝の上に座ると、タバコを指で挟んで取った。




