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12話
「お兄ちゃん、あのね…」
「何だよ。お兄ちゃんって…甘えてんのか?」
「それは、あるかも」
「やけに素直だな?で?何だ?」
冬四郎はくしゃっとむつを撫でてから、肩に手を回して引き寄せるともたれさせた。
「能力戻るように、ちょっと頑張ってみる。普通じゃないって言われても…良い。それで、誰かが傷つかないように出来るなら、そうしたい」
「そうか?お前がそうしたいなら、そうしたらいい。今度な…今度、誰かがお前を普通じゃないって言ったらすぐに俺に言えよ?谷代君じゃ頼りないから、俺がぶちのめしてやるよ」
煙草をくわえて、くっくっくっと冬四郎は笑った。むつは冬四郎から、そんな言葉が聞けるとは思いもせず、驚いたように瞬きを繰り返した。




