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12話
むつが何かを探すように、光が飛んで行くのを目で追って見ている。そうさせているのは西原だと思うと、何とも言えない気持ちになり、冬四郎は西原の額をぱちんっと叩いた。
「…っう…」
「…えっ?」
まさか、呻き声が漏れるとは思いもせず、冬四郎は驚いたように西原を見た。西原はこほっと咳き込み、血の塊を吐き出した。
「お、おい…むつ、西原君が…」
飛び立っていく光から、ゆっくりと西原は視線を戻したむつは、ほんのりと笑みを浮かべていた。
「戻ってきた?」
「あ、あぁ…」
むつは手をついて、西原にぐっと顔を近付けた。微かにだが、しっかりと呼吸を自力でしている。顔にかかる息が、その証拠だった。




