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12話
「玉奥さん…彼の魂はまだここに…あなたが、いつまでも悲しんでおられるから、逝き場がないのですよ」
4の地蔵の声にむつは顔を上げた。自分のせいで、西原の魂がさ迷ってしまっていると責められている気がした。
「間に合いそうです。彼はここに…」
そっと地蔵が両手を差し出した。そこには、蛍のように小さな光が呼吸をするように、淡く光を放っていた。むつはそれが何なのか、すぐに分かったのか地蔵の方を見た。涙でぐしゃぐしゃになっている顔に、微かに驚きと期待をするような表情が浮かんでいた。
地蔵は頷いて見せると、その光をそっと西原の胸の上に置いた。光は吸い込まれるようにして、西原の身体の中に入っていった。
「あとは、彼次第ではありますが…きっと大丈夫でしょう。玉奥さんが彼を想うように、彼も玉奥さんを想っているのですから」
にっこりと微笑んだ地蔵は、深々と頭を下げた。そして、何事もなかったかのように、自分たちが立っていた場所へと向かっていく。




