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12話
むつは、はぁと息をついて鼻をすすった。西原に対して言いたい事は沢山あるし、これからもずっと一緒に居れるのが当たり前だと思っていた。それなのに、自分の不甲斐なさでこうも簡単に西原まで失ってしまった。能力が使えない事で、西原を失うなら普通じゃなくていいから、能力が使えたら良かったのにと思わずにはいられない。
色々思う事がありすぎて、むつの涙は止まらない。当たり前だった事が、こんなにも大切だったなんて、失ってからようやく分かった。だが、それでは全てが遅すぎた。
「…おにぃちゃ…んっ…」
西原の頬から手を離したむつは、冬四郎の方を向いた。ぐずぐずと泣きながら、むつは冬四郎に手を伸ばした。冬四郎は当たり前のように、むつを引き寄せて抱き締めた。ぎゅっと抱き締めると、むつは胸に顔を押し付けて声を圧し殺して泣いた。
「どうしたら、いいのっ…先輩がっ…またっ…また…離れるの…嫌なのに…」




