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12話
ううっとむつは嗚咽を漏らした。すんっと鼻をすすって、西原の頬に触れた。ずっと外に居たからか、すでにひんやりと冷たい。
「能力、あってもなくても後悔ばっかりっ…必要な時に使えなかっ…だから、あたしのせいで…あたしのせいで、先輩が…本当、役立たずだ…」
ぼたぼたと落ちていく大粒の涙で、西原の頬が濡れた。冬四郎はむつの方を見て、話を聞いているが相槌も打つこともない。今は、返事も何も必要ないと思っていた。
「先輩にさ…き、キスされて、前に…嫌だって思ったし、会いたくないって思った。でも、それなのに仕事もあって、一緒に居る事多くって…一緒に居るの当たり前みたいになってて…ちょっと好きかなって思ったりして…なのにさ…」
むつはぺちんっと冷たくなった、西原の頬を叩いた。当たり前の事だが、西原は何の反応も示さない。




