2話
酔った祐斗と西原が、何やら言い合いを始めると間に挟まれてるむつが、今度はおろおろしている。颯介がなだめに入ってはいるが、あまり効果はなさそうだ。おしぼりを置いたむつは、そろっと身を引いて間から抜け出すと冬四郎の後ろを通り、狭いのに冬四郎と山上の間に座った。
「…泣き止んだか?」
「お陰さまで。何、呑ませたの?」
「日本酒。みやが、混ぜた」
むつは困ったように笑った。まだ睫毛には涙がついていて、しっとりと濡れている。むつは、膝を抱えるようにして座ると、はぁと溜め息をついた。
「話して良かっただろ?湯野ちゃんも祐斗も、力がどうのなんて気にもしてないしな」
「うん…もっと早く話したら良かったも」
「そうだな。でも話にくい事だったんだろ?なぁ、むつは西原の事、好きなんだな?」
「かなぁ…?分かんない。けど…うーん…前はさ、他の人好きで、でも先輩と再会したらやっぱ居心地よくて…けど、この前あの人と再会して、困ってる時には助けてくれて…あたし、側に居てくれる人なら誰でも良いのかよって感じ、しない?」
タバコを吸っていた山上は、くっと肩を揺らして笑った。確かに、むつは気が多いのか、あっちこっちに気になる男が居るようだった。
「でもさ…あっちこっち気になって…それって好きとかじゃないんだと思う気もする」
「単なる寂しがり屋か?でも、西原に言われたのがツラかったんだろ?」
「うん…でも、しろにぃに言われてもかも。状況とか色んな物が総合的に合わさって…だよ」
むつは冬四郎のおしぼりを取ると、また目元を押さえた。すでに沢山ないているのに、まだ涙は渇れないようだった。




