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12話
「離してっ‼いや…」
ぐっと手を掴んで離さない冬四郎は、じっとむつを見ていた。諦めろと云われているようだったが、むつは嫌々と首を振った。
「代わりなさい」
むつに代わって、冬四郎は西原の心臓のあたりをどんっと叩いた。そして、体重をかけるようにして、ぐっぐっと心臓マッサージを始めた。むつは冬四郎が心臓マッサージをするのを、涙を拭いながら見ていた。
むつと冬四郎が必死に心臓マッサージをして人工呼吸をするのを、颯介と祐斗は少し離れて見ていた。諦めきれない気持ちはよく分かるが、いつまでも続けていてもどうにかなる事ではない事は、明らかだった。
祐斗は泣きそうになりながら、西原から鬼の方に視線を向けた。地蔵に諭されているのか、自ら後退していくとぽっかりと開いた穴に身体を滑り込ませた。




