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12話
西原はぼそっと何かを呟いた。むつは驚いたように顔を上げたが、頷いた。そして、西原の身体を持ち上げさせて自分にもたれさせた。後ろから抱き締めるようにして、むつは腕を回して西原に顔を近付けた。
はぁと安心したような、西原の吐息が漏れた。むつは少しも躊躇う事はなく、西原にキスをした。
その様子を見ていた冬四郎と祐斗が、少し驚いたような顔をしていたが、颯介だけは優しげに微笑んでいた。
唇を塞いでしまうと息が出来なくなるのではと思い、むつは西原の薄い下唇に自分の唇を重ねていた。だが、西原は少し顔を反らすようにして、むつに唇を押し付けた。
むつの頬に手を添えて、西原がゆっくり離れると、むつの唇にも血が少しついていた。西原がくったりとむつに身体を預けると、むつはもう1度唇を重ねた。




