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12話
「ごめん…」
弱々しく笑みを浮かべたむつだったが、目にはたっぷりの涙が浮かんでいて今にも落ちそうだった。ずっと鼻をすすったむつは、涙が落ちないようにとぐいっと手の甲で拭った。そんなむつの顔が見えているのか、西原は困ったように笑ってみせた。
「また、泣かせたの…俺か…最期まで、泣き顔か…悪い事したな…」
ひんやりと冷たい手が、むつの頬に触れた。冷たいが、暖かみを感じさせる優しい手だった。
「…ごめんな?」
唇を噛み締めたむつは、ゆるゆると首を振った。何か言おうと口を開くも、言葉が出てこなかった。その代わりに、身をかがめると西原をぎゅっと抱き締めた。




