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12話
駆け寄ったむつは、西原の横にぺたんっと座り込んだ。浅い呼吸をしていた西原は、うっすらと目を開けた。
「…遅い」
「うん、お待たせ」
西原が顔を動かして、むつの足にすり寄るような仕草を見せると、むつはそっと西原を頭を持ち上げて太股の上に乗せた。西原は、はぁと深く息をついた。口元から喉にかけて、血がべっとりとついていた。
腹の傷は塞がりつつあるようだが、狛犬の言ったように内臓の損傷までは治せていないようだった。
こほっと西原が咳き込むと、こぽっと口元から血が流れてきた。むつは袖をまくって、服で手を拭ってから西原の口元の血を指先で拭った。
「大丈夫?」
「…いや、どうかな…待たせすぎ」
はぁはぁと呼吸をしながら、その合間に西原は小さな声で呟くように言った。




