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11話
びしゃっと地面に落ちたのは、体液にまみれた大きな眼球だった。眼球がなくなり、ぽっかりと暗い空洞になった目からは、涙のようにとろとろと緑色の体液が流れていた。
腕で頬を撫でるようにして、体液をなすりつけた。むつは手を持ち上げて、とろっと滴る緑色の体液を見ていた。だが、腕を振り下ろして体液を飛ばすと身体の向きを変えた。もう片方の目を次の狙いと定めたのだろう。
ふっと息を吐くように、むつは笑った。その気配を感じたのか、鬼がふるふると弱く首を振った。だが、そんな小さな抵抗で、むつが止めるわけはなかった。
もう片方の目の瞼を持ち上げさせて、むつは手を伸ばした。だが、その手が目の中に沈みこむ前に、どんっと何かに突き飛ばされて、バランスを崩して地面に落ちた。




