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１１話

「本当に、本当に…むつさん止めないと」

「そうだけど…どうやって？」

危ないと思ったら殴ってでも止めると冬四郎に向かって言っていた颯介だったが、むつの様子を見ていると止めに入る事が躊躇われた。何も見えていないかのような暗い瞳に、薄ら笑いを浮かべているむつは、見慣れたむつと大きくかけ離れすぎていて怖かった。

「引きずってでも離さないと…」

そうは言っても、祐斗も近付く勇気が出ない。近寄れば鬼の餌食にもなるだろうし、むつを引きずってでも離せるような気がしなかった。冬四郎でさえも、むつの様子を呆然としたように、見ているだけだった。

「…おい、おっさん。妹だろ？止めろよ」

「無茶言うな。あれは、鬼をなぶり殺すまで止まらない気がする」

冬四郎の言った通りだと、颯介も祐斗も思っていた。自分の気が済むまでなぶってから、殺す。鬼が動かなくなるまで、むつはじわじわと追い詰めていくだろう。