2話
少し落ち着いてきたのか、むつは吐息を漏らしながら、鼻をおしぼりで押さえている。
「…だ、そうです。仕事はありますからね、辞めれませんよ。それにね、俺もむつさんは普通じゃないと思ってますよ。お兄さんは、ほら…署長だったりするし、妖でも何でもすーぐ仲良くなっちゃうし、物怖じしないし、考えなしで行動するし、すぐ怒るし。でも、尊敬してますよ」
「…尊敬要素なくない?」
「そうっすか?気のせいですよ。とにかく、むつさんらしくないですよ。むつさん考えるの嫌いでしょ?行動派だから。力が無くても、むつさんは、むつさんだから…無いなら無いで何とかしろって、言うじゃないですか、むつさんは」
誉めても居ないし、フォローにもなっていないが、むつはようやく少し笑った。
「むつさん、ちょっと疲れてるんですよ。色々、短期間であったから。今はゆっくりしなさいって事ですよ、大丈夫ですよ。仕事なら、俺がばっちりこなしますから。ついでに、むつさんを泣かせた西原さんも俺がやっつけますから」
へらへらっと祐斗が笑うと、颯介と山上が顔を見合わせた。むつもいぶかしむように首を傾げている。
「祐斗君、酔ってますよね…」
「酔ってるよな。むつの話の衝撃がデカくて酔いが回ったか?そんなに呑んでないよな?」
「衝撃で冷めるじゃなくて、酔うですか?」
「…祐斗は何呑んでるんだ?」
「カルピスチューハイのはずですけど」
「本当か?」
「たぶん…たぶん、違います」
グラスの中身の匂いを嗅いだ颯介が、眉間にシワを寄せて、山上に渡した。匂いを嗅いだ山上も眉間にシワを寄せている。そして、そのままの顔で隣の冬四郎を見た。