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11話
「あ、狛犬。むつさん受け止めて怪我したのか?血が…」
「ん?我は大丈夫だぞ。むつのかもな。血の臭いが凄く濃くついてた」
「むつと西原君のかもな」
「…に、西原さんは?さっき、むつさんの先輩って叫び声がしてましたけど」
祐斗がむつの背中を見ながら言うと、颯介と冬四郎は顔を見合わせた。そして、むつの方を見てから、すぐに追い掛けていった。颯介と冬四郎が西原の事を何も教えてはくれず、駆け出したのか分からない祐斗だったが、とにかく地蔵を抱き上げて、狛犬と一緒にあとをおった。
むつに追い付いた冬四郎が、がしっと肩を掴み振り向かせると、力が入っていないように、むつはかくんっと顎を反らして冬四郎を見た。むつは冬四郎を見ているが、その目に何も移っていないような気がした冬四郎は、引き留めたにも関わらず何も言えなかった。




