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11話
狛犬に上半身を預けるようにして、むつがぐったりしている。頭を打ち付けたりせずに済んだ事に、ほっとした祐斗だったが、むつがぴくりともしない事に不安を覚えた。
「む、むつさん?」
ぐったりしているむつを抱き上げると、ゆっくり目を開けて祐斗を見た。ぼんやりしたような目は、焦点が合ってないかのようだった。
「むつさん!!大丈夫ですか!?」
祐斗の声に反応するように、むつはぴくっと指を動かして、のろのろと手を上げた。祐斗の顔を掴むようにして押しやり、立ち上がったむつは鬼の方を見た。心配そうに駆け寄ってきた颯介と冬四郎には、目を向けようとさえしない。
「むっちゃん!?大丈夫…」
声をかけて肩に触れようとした颯介は、途中でその手を止めた。むつはじろっと颯介を見上げただけで、何も言わない。




