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11話
叩かれないよう注意をしつつ、あっという間に鎖骨にまで辿り着いたむつは、間近で鬼の顔を見上げた。むっとしたように、少し唇を尖らせているむつだったが、その顔には何の表情も浮かんでいない。目にも感情らしきものはなく、ただ目に移るものを見ているだけにすぎない。
そんな虚ろな様子で、盛り上がった鎖骨をだんっと踏みつけると、鬼がぐうっと呻いた。むつの足の大きさに合わせるように、踏まれた場所がぼこっと凹んでいる。鬼が呻いて、ぐらっと身体を揺らしたとしても、むつは何の反応も示さないし、バランスを崩す事もなかった。
ぼやりとした目で鬼を見上げていたむつだったが、ぐっと踏ん張ると右手に持ち直した日本刀を軽く振り上げて、ずばっと横線を引くようにして振った。ぴっと鬼の首元に線が入り、ぷしゅっと緑色の液体が吹き出した。




