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11話
地蔵を抱っこして走ってきた祐斗は、道を塞ぐように落ちている木を目の前にして、1度地蔵を下ろしてからよじ登って反対側に下りた。そして、手を伸ばして地蔵を抱き上げた。狛犬は軽々と飛び越えて、祐斗と地蔵を待っていた。その時に、むつの声が聞こえた。先輩っと叫ぶ声は大きく、悲痛な感じが漂っていた。
西原に何かあったのだろうと、祐斗は地蔵を小脇に抱えるようにして急いだ。そして、目の前の状態に驚いた。
何度も足を運んだ見慣れた道のコンクリートは剥がれ、ぼこぼこになっている。それに地蔵が並んでいた辺りには、ぽっかりと大きな穴が空いている。浮遊霊と亡者は、公園の方に避難するように逃げている。
「…な、どういう状況に」
何が起きているのか、全く把握の出来ない祐斗は辺りを見回していた。




