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11話
目を細めて、怒りをあらわにしているむつは、じろっと鬼を下から見上げた。むつが手当てをするのを、わざわざ待っていた鬼は、にたにたと笑っている。その顔に、さらに怒りを覚えたむつは、ふっと息を短く吐いた。
「むっちゃん?」
「…お地蔵様も祐斗もあてになんない。先輩はこのまんまじゃ…だから、あたしが片付けてやるよ」
颯介が心配そうにむつを見ていると、むつは自分より背丈のある颯介を見下ろすような目付きで、吐き捨てるように言った。低い声といい、怒りをあらわにしているだけでは無さそうなむつに、颯介は若干の恐怖を感じた。以前にも見た事あるように、むつの目がほんのりと緑がかって見えた。
「大丈夫?」
「うん。これがあるから大丈夫」
むつはにやっと笑って見せると、右手に持っていた日本刀を一振りさせた。




