2話
少し落ち着いたかのように思われたが、またぼろぼろと大粒の涙を溢して泣き出したむつに西原は、おろおろしている。
「ごめん、けど…」
いくらむつ誰にも言わないで、と言われていたとは言えども黙っているわけにもいかなかった。
「むつ、仕事辞めたいのか?」
「辞めたい、って言うか…」
ごしごしと手の甲で涙を拭ったむつは、山上の方を向いた。何か言おうとして、口を開くも上手く言えないようで、また口を閉じた。
「だってさ、だって…居ても役に立たないもんっ…まだ、まだ気配は分かるし視る事、出来る…でも、それも強いのに限られてる…視る事も出来なくなってきてて、だから、だから祐斗にしろにぃと先輩の依頼お願いしたんだもん…細々した、どうでもいい依頼はあしらえても、そうじゃないのは出来ないっ…颯介さんと祐斗が仕事行くのに、一緒に行っても邪魔になるだけだし…けど事務所、壊したから…その分くらい返さなきゃって、思ってる…でもぉ…」
わあっと泣き出したむつを祐斗と西原が左右から、何とかなだめようとしているが、泣き止みそうにも落ち着きそうにもない。
「…事務所、壊したのお前じゃないけどな。全壊したみたいに言うなよ…」
「そうだよ。壊れたから、綺麗になったし。むっちゃんが片付けも掃除もしてくれたんだし」
「けど、やけに祐斗に仕事を回してたのはそういう事だったのか。冬休みだし、経験積ませようと動かしてるんだと思ってたけど…あ、そうか。辞める事も頭にあったから今のうちに経験積ませて、へましたらフォローしてやるつもりだったんだな」
「そういう事だったんですね。何だかんだ、むっちゃんは優しいし責任感強い子ですからね」