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11話
腹にたっぷりと軟膏をぬりつけ、むつは西原を抱き起こすと冬四郎がすぐに、シャツを引っ張り上げた。むつは残っている軟膏を全部すくって、背中側の傷口にも擦り付けていった。
むつがぬっている軟膏が、何なのかは冬四郎も知っていたが、これだけ出血が酷ければ、傷口が塞がったとしてもどうなるかは分からない。
そっと西原を仰向けにさせ、むつは袖で腹の血を拭った。ぱっくりと割れていた傷口は、まだ塞がってはいないが出血は止まってきたようだった。
「先輩?」
あまり血のついていない手の甲で西原の頬を撫でると、西原はうっすらと目を開けた。むつの方に視線を向けてはいるが、むつを見ているかは分からない。




