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11話
むつの大声が聞こえたのか、颯介と冬四郎がやってきて、ぐったりと横たわった西原と、その腹に丸めたコートを押し当てているむつを見て、険しい表情を浮かべた。
「むっちゃん、西原さん」
颯介が側に駆け寄ろうとすると、それに気付いた鬼がぴんっとむつを指で弾いた。西原の頭を膝に乗せて、止血をしていたむつは西原の頭を落として、地面を転がった。颯介がむつの元に行っている間に、冬四郎は西原の腹からコートをどけて怪我の具合を確認した。そして、すぐにぐいっとコートを押し付けるようにして、西原の腹を押さえた。
ぐっと呻いた西原は、薄く目を開けた。冬四郎が険しい表情をしているのを見て、西原はふっと溜め息を漏らすように笑った。
「ばかかお前は…」
冬四郎が呻くように言うと、西原は顎を引くようにして微かに頷くと、また目を閉じた。すでに、目を開けている事もままならないのだろう。




