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11話
ずんっとすぐ側で揺れ、視界がさらに暗くなると、はっとしてむつは仰向けになった。まだ振動が続いていて、細かな破片のコンクリートがかたかたと揺れていた。
目の前にやって来ていた鬼は、むつに向かって手を伸ばしている。長く伸びた爪は尖っていて、勢いよく向かってきている。逃げ切れないむつは、ぎゅっと目を閉じた。
どすっと鈍い音と呻くような声が聞こえたが、むつの声ではなかった。ぽたっと何かが顔に落ちてきて、むつがそっと目を開けると目の前には手のひらくらいは、ありそうな爪が見えていた。その爪の先から、ぱたっぱたっと液体が流れ落ちている。
「…っ‼先輩!!」
むつの目の前に立っているのは西原で、その腹を突き抜けて爪が見えていた。




