2話
しゃくりあげ、声を押し殺して目元をおしぼりで押さえたまま、むつは泣き続けている。隣に居る祐斗は、どうしようとおろおろしている。
「むつ、お前にそれ言ったの身近なやつだろ?だから、そんだけ気にしてるんだよな。誰か当ててやろうか?」
山上が言うと、むつは首を振った。
「いや…当てなくても…」
ずっと黙っていた西原が、溜め息をついて口を開らいた。そして、立ち上がるとむつの横に膝をついた。
「ごめんな、むつ。言ったの俺だな」
ひっくっとしゃくりあげ、むつは首を振った。すでに鼻がつまっていて、すすり上げる事も出来ずにいる。薄く開いた口で呼吸をしようすると、嗚咽が漏れこほっと咳き込んだ。
「西原に言われたのは、相当ショックだったんだろうな。だから、部屋見に行ってる時、お前ら途中変だったもんな。むつは無理してる感じだったしな。むつ、西原に言われてからだろ?完全に力がなくなったのは」
何でもお見通しなのか、山上が言うと喋れるような状ではないむつは、おしぼりで目元を拭って、少し顔を上げた。強く押さえすぎたのか、目元も鼻の頭も赤くなっている。顔を上げたむつは、照れ笑いのような物を浮かべた。
「…バカ、だよね。先輩って…言わなきゃいいのに…正直っていうかさ…」
「俺のせいで仕事辞めるまで考えてるんなら…」
西原が言うと、むつは持っていたおしぼりで西原の顔をぺしんっと叩いた。
「本当か、むつ?それは俺、聞いてないぞ」
細い目をこれでもかというくらい見開いて、山上が驚いている。むつは涙を溜めた目で山上を少し見てから、西原に視線を向けた。
「昨日、仕事辞めようかと思ってるってむつから聞きました。何でかと思ったら、そういう事だったんだな…」
「誰にも言わないって約束したのに」




