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11話
「…悪口言ったから、ちょっと頭使ったって事かしら?人の言葉は分かってるのかもしれないわね」
「なら、帰ってくれって頼むか?」
「通用しないでしょ…」
表情を引き締めたむつは西原を抱き寄せるようにして、背中越しに鬼を見た。木がなぎ倒され、公園の中がよく見えている。相変わらず、亡者も浮遊霊も鬼を怖がっているようで、物陰に隠れている。
「…もぅ隠れてもいられないみたい」
箒のように使っていた木を放り出して、鬼はずんっと肘をついた。木は軽々と、大通りの方に飛んでいき道路を塞ぐように落ちた。
ぐぐっと電柱の方に顔を寄せた鬼は、むつと西原が居るのを知っているようで、じっと見つめている。ふしゅうっと鼻息だけでも、なかなかに強い風のようだった。




