675/753
11話
むつと西原が密着し、余裕をかまして会話をしているのを同じように電柱の隙間に身を寄せている颯介が見て、くすっと笑っていた。冬四郎に見えていなくて良かった、とそう思わずにはいられないくらい、自然で仲睦まじい様子だった。
颯介に微笑ましく見守られているとはつゆ知らず、むつと西原は一時のほのぼのとした時間を過ごしていた。
「さて…どうすっかな」
「木も枝が減ったら効果はなくなると思うけど…」
「時間の問題か」
「ちょっと残念そうね?何で?」
「堂々と密着してらんなくなる」
「すっごい余裕よね…」
あははっと西原は笑ったが、すぐに表情を引き締めた。ぱきんっと折れた枝、ぱらぱらと飛んでくる。力任せな鬼からの攻撃は避けやすい。だが、それは隠れられる場所が近くにあったからの話だ。それが無ければ、今頃もあちこちと走り回っていた事だろう。




