671/753
11話
鬼の振り上げた両手が、ばんっと地面を叩くとむつの足は浮いた。振動と大きな音に、むつはうんざりとしていた。最初はそれだけで怖かったが、何度も同じ事をされていると驚きはしても、慣れてくる。そして少しイライラしてきて、ちっと舌打ちを鳴らした。
「むっちゃん、イライラしてますね」
自分たちは結界から鬼を出さないように注意を引き付け、逃げ回っているだけで何か出来るわけではない。そうなってくると、焦りと苛立ちが募る。それを颯介も感じているようで、ぼそっと呟いた。
「えぇ…何かしでかしそうで怖いです」
「しでかすより、体力がもつか心配ですよ。体調も悪いようですし」
再び、二手に別れ冬四郎と颯介は一緒に居る。普段、あまり仲が良いとは言えない2人だが、考え方や行動は似ているのか、意外と気があっている。
「そうですね…」
心配そうに冬四郎は、むつが居る方に目を向けた。むつとは西原が一緒に居るが、どっちも危なっかしく、一緒にするんじゃなかったという思いがよぎった。




