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11話
「そうですね」
祐斗が地蔵を抱っこして、石段を下り始めると、どんっと足元が揺れた。手摺なんか無い場所で、転げ落ちそうになったが何とか踏みとどまった祐斗は、地蔵がある方を見た。
「おい、死鬼がだいぶ暴れてるんじゃないのか?こっちまで振動が来たぞ…」
「みたいですね。あぁ、まだ立ち上がってはないようですが、かなり地上に慣れてしまったんでしょう」
「急がないとですね」
「ゆっくりし過ぎたかもしれない」
まだ足元は微かに揺れているようだったが、祐斗は地蔵を落とさないように気を付けながら、石段を駆け下りていく。
「結界があるとは言えど…人に見られるかもしれないな。お主だけでも、役目に戻れ」
「はい…離れるべきではありませんでした」
「済んだ事だ」
「大丈夫ですよ…むつさんが任せろって言ったんなら。湯野さんもついてます。うちの2人は言った以上は、何とかしてくれてますよ、きっと」
祐斗は自分に言い聞かせるように言って、ばたばたと石段を下りて残りの3段くらいは飛び降りた。




