2話
うつ向き、正座し、太股の上に置いている手の甲に、ぼたっと水滴が落ちた。すんっと鼻をすすって、深呼吸しても落ち着かず、ぼたぼたと水滴が落ちていく。
「あの時…向こうに行けば良かったかもってちょっと思った…普通じゃなくても、あそこでなら受け入れて貰えるもん…でも、でも…こっちで皆と居たいって思ったから、だから…」
「むつ、誰だそんな事言ったの」
山上の声は意外と優しげではあったが、その言い方に怒りがこもっている。それに気付いているのか、むつは言わずに、首を横に振った。
「お前、それこの前も言ってたな…普通じゃないって。けど、湯野ちゃんは管狐連れてるし、祐斗は霊視出来るけど普通の男の子だろって言ったら、お前そうだね、って言ったろ?だったら、お前だって、普通の女の子だろ」
鼻をすすり、おしぼりで目元を押さえながらむつは頷いた。だが、溢れてくる涙は止まらない。
「…お前、何で力が使えなくなったか分かってるんだよな?」
「うん…夕雨さんと話してきて分かった。自分が否定してるから…今まで以上に…受け入れられないから。でも…出来ない…異常だって言われても、仕方ないのは分かってる、分かってるけど…それがもう嫌…」